銀座 森岡書店展示に向けて 森岡書店 店主・森岡督行さんインタビュー【その2】

 【目次】 

箱の佇まいに心が動いた。

清水さん:
次の質問になりますが、21日から一週間、戸田デザイン研究室の展示を森岡書店さんでやられるわけですが。

これまでお話をいただいたところであれば、当然取り上げるものは『あいうえおえほん』だったり 定番と言われるものになると思いきや。意外なピックアップをするなと。

際、展示企画について戸田デザイン研究室の戸田さんと打合わせをされて 今回、名作絵本のシリーズを森岡さんが「これがいいと思います。」と仰ったとお聞きしていますが。

あえてメインではなく、あまり知られてない方と言った方が分かりやすいですね。これを選んだというのはどういう思いがあったのでしょう?



森岡さん:
れはですね、実は戸田デザインを訪問するにあたってホームページなど どんな仕事をされているのかな?というのを改めて見たりした訳ですが。この名作絵本集は全然頭になかったんですよ。

ところが事務所を訪ねまして、戸田さんといろいろ話をさせてもらって「どんな本をやっていこうかね。」という場面になって初めてです。

この箱を出されて「 5冊セットでこんなのもあるんですよ。」という場面がありまして。その時初めて「あ、これだなあ。」という風に思いました。

聞いたら、これはあまり書店でも見る機会が少ないと言うか。もしかしたらね、あまり多くは売れているものではないのかも。

清水さん:
そうですよね。そもそも書店に並ばないのであれば

森岡さん:
知る人ぞ知る本だ、というところだったのですが。
私はやはりこのデザインに心を動かされたというか。この箱の佇まいと、この中に入っている話のラインナップ。

清水さん:
宮沢賢治の『竜のはなし』と太宰治の『走れメロス』。花岡大学の『世界一の石の塔』、『百羽のツル』と小川未明の『牛女(うしおんな)』。

このラインナップも『走れメロス』は皆さん知っていますが、他はそんなにメジャーなお話でもないですもんね。

森岡さん:
私もこの中で知っているのは本当に『走れメロス』くらいですが。仏教的な要素のある話も入っていると、確か戸田さんが仰っていたなあと思います。
また、この戸田幸四郎さんの絵ですよね!

清水さん:
これはいわゆるデザイン的なイラストではなくて、本当に肉筆画というのですかね。

森岡さん:
ええ。キャンバスに描き込んでいった絵だと思うのですが、この素朴さっていうのかなぁ。そういう所をより多くの人と今回共有できたらなぁと思ったのですが。
とは言ってもやはり箱の佇まいですね。

清水さん:
白ベースで真ん中にオレンジでツルの絵が描かれていて。

森岡さん:
はい。『百羽のツル』の絵ですね。



清水さん:
素っ気ないと言ったら、素っ気ないデザインだと思うのですが。

森岡さん:
ちょっと迷っていたんですよ。どんな本を販売すれば、森岡書店に普段来てくれるお客さんが喜んでくれるのかと。あるいは出版社としても有意義に思ってくれるのかということを考えつつ、話を聞いていたのですが。

これはほとんど直感的なものですけれども、やはり出てきたときに「売りたいな」と思うんですよ。あと、店に並んでいる風景が立ち上がってくるっていう。

でもそういう気持ちのところから始まるコミュニケーション。「これを紹介する。」と言うところから立ち上がる空間。そういうものを大切にしたいなあと思ってはいるんですが。

この箱を見た時に感じたのですが、これはやはり「ビジュアルランゲージ」ということではないかなと思うんですよね。

戸田幸四郎さんがデザインされていたと思うのですが「デザインで語っている何事か」というのは、この箱に確かにあるなと思います。てらいの無さ、そして情報を伝える機能性。

清水さん:
余計なことはないけれども、必要な物が全て的確にミニマムに入っている。
それは先ほどの話にもあった、最初に作られた時からの哲学というか、それがそのままパッケージにもあるような感じですね。

森岡さん:
そうですね、うん。

清水さん:
作っているといろいろ情報を載せたくなっちゃうと思うのですが、それがむしろ潔く

森岡さん:
動かし難いですよ、これはやはり。
なんて言うのかな。デザインしているけれども、削ぎ落とされているのに装飾されているというか、そんな感じの箱だなと思いまして。

清水さん:
パッと見、何もしていない。見れば見るほど、こうなるしかなかったというか。

森岡さん:
そうですね。これが並んでいる空間を作りたいと。その思いが強いですね。光景がイメージされたっていう、まずそちらの方が大きいかもしれないですね。
中の本はその時に読んでいませんから、まずビジュアルが立ち上がったという。

清水さん:
森岡書店さんのコンセプトとして「一冊、一室。」というものが創業当時からあると思いますが、まさにこれはそれを表現する。

森岡さん:
チラっと見て絵の面白さは感じましたが。ただ内容がわかっていない。
まあ、これを売りたいなと思ったのは、やはりこの箱のデザインがすごく説得力があったということだと思いますね。

正直言って中を読んでいないですから。作者の名前は全員知っていますし、まあ『走れメロス』くらいは話は知っていると。ほかの4作品は知らない。仏教の話がメインになっているというのは情報として教えてもらったと。

清水さん:
現物が目の前に置かれたときに、ビビッとお店のビジュアルが立ち上がったわけですよね。

森岡さんのところは毎週毎週、展示をベースにやっていらっしゃいます。特に今回は森岡さんに迷いがなくて、これだと言う風にピンときたというのは、すごい巡り合わせというか、出会いですね。

作品それぞれの背後に描かれたもの。

森岡さん:
あと『戸田幸四郎名作絵本集』。これは読んでみたいなと思ったのもありますよね。名作絵本集だけれども、名作のうち私が知っているのはつしかない。

清水さん:
他は何なのだ?と。 

森岡さん:
そうしたタイトルの面白さっていうのかな。ちょっと言い方はどうかなと思いますけれども、多分すごく表層的なところで判断しているのは確かなのですが

ある種、私の野生の勘みたいなものをこれに感じているんですけれども。その野生の勘みたいなものは、一応書店員として24年ぐらいの時間がありますから、それがベースになっていると。

清水さん:
やはり、
余程そこに何かがあるってことですよね?

森岡さん:
ん、そうですね。これで迷いがない。これを売ろうと。

清水さん:
ちょっと意地悪な質問をしてしまうと、最初のインスピレーションでこれだと思って。
今、手元にありますが、実際に触って 中身も見たりされたと思うんですが、その後の想いも揺るぎなかった?

森岡さん:
揺るがないですね、もう全然!
読みましたけれど、今はもう娘も大きくなったので、この本を喜んで読むかなと思うと そうでは無いかもしれないですが。もし娘がもう少し小さかったら読み聞かせたいなと、そう思いますね。

清水さん:
戸田幸四郎さんが一枚一枚描いた、この油絵。これには力がありますよね。

森岡さん:
そうですね。もしかしたらこの絵は自分のお子さんに見せたい、見せるために描いたものかもしれないなとも思うんですよね。そこに全然無理がないなと。


『走れメロス』

清水さん:
森岡さんも絵本を一冊出されました。同じ絵本を作った人間として、改めてこの『戸田幸四郎名作絵本集』がすごいなと思うところがありますか?

※森岡さんは2021年3月にイラストレーターの山口洋祐さんと絵本『ライオンごうのたび』を出版(あかね書房刊)

森岡さん:
そうですね。もちろん戸田幸四郎さんが絵を描いているのですが、お話も5
編選んでいる。
これは幸四郎さんが垣間見た人間としての生き様。何でしょうね5編に託されている世界観。

清水さん:
なぜこの5冊だったのかとか、テーマの選び方とか。

森岡さん:
各々違うと思うんですよ。『竜のはなし』と『百羽のツル』、この背後にある人間像というか。そういったところを読み取っていくのも名作絵本集の楽しみなのではないかな。

清水さん:
確かに。これは一冊一冊別で買えるようになっていますが、戸田デザイン研究室としてはあえてセットで売っている。そこには意味がありますもんね。

なぜこの5つの話を選んだか?それをセットにして売りたかったのには、何か意味があるはずですよね。一人一人、受け取り方は違うでしょうけれど。

森岡さん:
やはりね、最終的には戸田デザインは知育絵本とかありますけれども、上から何かこう説教をするとか、そういうことではないと思うんですよね。

子どもが楽しいと思う、ちょっとした感動があるとか。そういうところを大切にしているのだと思いますね。まあこの5冊もそうだと思うのですが。

清水さん:
そうするとこのまったく毛色の違う50作品の中で多くは『あいうえおえほん』に連なるシリーズのものが多いけれど、これは本当に全く違う。

ストーリーものであって、それも昔から語られて来ている話。宮沢賢治や太宰治の作品がありながらも、根底に流れているもの  森岡さんが仰ったような子どもに対しての思いだったり、そういうところが必ずありますよね。

それは今回の展示で少しでも感じてもらえたら、一番良いですよね?

森岡さん:
えぇ。大切なことなんじゃないかなと思いますよね。 

インタビューその3では、「名作絵本集」について 森岡さんのより深いお話をお届けします!

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