さて、いよいよデザイン開始!目指すべきはidontknow.tokyoの作った『TRIO(トリオ)』のルールをそのままに、より小さな子どもたちが楽しめるようなカードゲームにしていくこと。
ここから『TRIO』が『TRIO APARTMENT(トリオ・アパートメント)』になるまでの、ちょっぴり苦しくて 最高にワクワクする道のりが始まります!
■悪魔が不在。鬼、急浮上!
繰り返しお伝えしている通り『TRIO』には「天使」「悪魔」「人間」の3つのモチーフがあります。
「天使」のカードをめくればラッキーなことがあり、「悪魔」はラッキーもアンラッキーも連れてくる。「人間」は大きなアクションには繋がりません。
このルールは崩してはならない。これが弊社 戸田(通称・親方)と私の揺るぎない考でした。
3つのモチーフは弊社のたくさんのイラストから選んでいくことに。まず「人間」のイラストはたくさんあります。
【その1】でお話したように「天使」もある。が…さすがに「悪魔」は不在でした。
まずはここをクリアせねば。なにか悪魔的な役割を担うイラストはないだろうか??当初は「魔女」や「妖怪」まで選択肢に入ってきました。しかし、どうもしっくりいかず プチ百鬼夜行状態に。
そこで突如、スポットライトが当たったのが「鬼」でした。ビジュアル的にも遠く無い…。この「鬼」を「悪魔」に見立てていくため、親方の地道なカスタムが始まりました。
キバの向き、そして西洋的なワイルド感をUPさせるための増毛。少しずつ変身を遂げていく鬼…。ひとまず「悪魔」モチーフは一旦、これで進めてみることになりました。
■雷に打たれる覚悟で加えた表情。
さて「悪魔」の次は「天使」と「人間」。正直「天使」はそんなに迷うことはありませんでした。
「人間」のバリエーションをどうするか。もちろん子どもたちが遊ぶのだから、子どもたちのイラストは必須です。
幅広い年齢層、ファミリーで遊ぶことも考えて 大人のイラストも入れてみることに。
ここで私の心に小さな影を落としたのが、【表情ないと寂しい問題】でした。
弊社には表情豊かな人物のイラストは殆どありません。 見る方の想像力でさまざまな物語や解釈が生まれる余地も残す、シンプルなデザインになっています。
いつもならこの感じが戸田デザイン!と私も思っていたのですが、今回はどうも違う…。
どのカードが当たるのか宣言し「それっ!」とカードをめくって当てる楽しさ、そのテンションにイラストがついてこない。クール過ぎる感じがしてきました。
これは、遂にイラストに表情を加える時がきたのかもしれない…。しかしこれはディレクターの立場からすると、なかなか高いハードルでもありました。
弊社のデザインにはハッキリとしたトーンがあります。そしてイラストのほぼ全ては 戸田の父親であるとだこうしろう(戸田幸四郎)が描いたもの。普段決して口には出しませんが、戸田は相当な神経を払い イラストを用いていることは 私にもよく分かっていました。
戸田はなによりも「仕事の本筋」を大切にします。父のイラスト、と言う理由で必要なことから目を逸らすことはないことは確か。しかし、イラストのオリジナリティは弊社の生命線でもあり、これはなかなかデリケート。
提案の仕方を誤れば、父と息子の雷(いかづち、と読んでください)が落ちてくるかもしれない…。実際、そんな思いもありました。
しかし、私は私の仕事をするべき。 妥協は不誠実です。戸田がある程度のデザインをあげてくれた時、前述したゲームとイラストのテンションのズレについて話しました。納得して聞いてくれている戸田の表情を見定めてから すかさず!
極めて涼しい顔で「んーー、例えばですね。こんなおどけた感じとかですね。」と女の子のイラストにウィンクをした目。さらに男の子の口に舌を描き、あっかんべーの表情にしてみました…。
しばしの沈黙…。雷に打たれる覚悟ができたあたりで戸田は大爆笑!
「なるほどな。なるほど、なるほど。」そこから一気にイラストに表情が加えられていきました。(あー、心のカロリーをかなり消費しました!)
■おざなりは御法度!カードの形。
全体の印象、さらに売行きそのものも大きく左右するのがカードの形です。弊社の『リングカード・シリーズ』が有難いことに これほど長く愛していただいているのは、あの独特の形も大きいと実感しています。
当初から戸田はいわゆる四角いカード型は考えていないようでした。一度は完全な円形で試作まで作り上げましたが「これではめくりにくいし、上下がわかりにくいな。変えるぞ。」という実に親方的な潔い判断で、周りに枠を取り下を削って真っ直ぐにしたホタテのような形に。
イラストの無い面には天使と「TRIO」のロゴも加わり、おしゃれなコースターにも見えてくる可愛らしい仕上がりになっていきました。しかもこれは子どもたちの小さな手でも扱いやすい!
そしてパッケージはちょっと素敵なお菓子の箱のようなイメージに。これなら場所も取らず、ギフトにもいいのでは?
まずはここまで仕上げたなら、上出来のはず。次はidontknow.tokyoさんとアシストオン 大杉さんにぶつけてみるのみ!
次回からは独立独歩でモノ作りに情熱を傾けてきた作り手たちの、静かでアツいアイデア交換が始まります。
【その4】へつづく