この5冊で "人間" が見えてくる。 『戸田幸四郎名作絵本集』

戸田デザイン研究室の作品というと、「色鮮やかでシンプル、わかりやすい。」という印象をお持ちの方が多いと思います。
『あいうえおえほん』『リングカード・シリーズ』などの代表作をはじめ、確かにその雰囲気が見てとれます。

そんなイメージを覆すと言われる絵本集が、弊社作品のラインナップにあることをご存知ですか?

■目次


知られざる名作、『戸田幸四郎名作絵本集』


その作品とは、『戸田幸四郎名作絵本集』。
太宰治、宮沢賢治、花岡大学、小川未明という名だたる文豪の作品に、戸田幸四郎が渾身の油絵を描いた5冊の絵本集です。

この5冊が描くのは「信頼」「献身」「友愛」「母の愛」「悪心」。どれも人間というものを語る上で、大きな意味を持つ心の形です。
その内容に呼応するように、戸田幸四郎の描く油絵も鬼気迫るものがあります。


実際に手にしたお客さまの中には、「本当に『あいうえおえほん』と同じ人が描いているの?同じ会社のもの?」と驚かれる方も
多くいらっしゃいます。
確かに、鮮やかなデザインでロングセラーにも恵まれた戸田デザイン研究室のイメージからは、かけ離れているかもしれません。

では、なぜ、この絵本集を戸田デザイン研究室は大切に販売し続けているのか?
そこには私たちが重んじてきた考えの根幹があるからです。


戸田デザイン研究室は知識や学びというものは、より良い人生を築くためにあると考えてきました。

あらゆる知識を単なる情報として処理するのではなく、視野を広く持ち「私はどう生きるか、生きたいか」という人生の舵取りの助けとなるべきものだという信念を持ち続けています。

そして、自分自身の人生を築いていく中で核となるものは「人間の心」である。その真理を真っ直ぐにとらえ、伝えるためにこのシリーズが存在しているのです。


『戸田幸四郎名作絵本集』は友を思う心も描いた作品もあれば、強いものにへつらう卑しさを照らし出す作品もあります。
そこに映し出される美しい心も悪心も、おそらく多くの人の心に同居するものではないでしょうか。

人間の心は複雑で脆いものでもあります
易きに流されてしまえば、いつの間にか自分の行く道が暗い影に覆われることもあります。
しかし、同時に自分自身の内側を照らし、優しさや信念というものを作り上げる強い光も持っています。

「私は、どう生きたいか。」

この作品を読んでくださった方々が心を動かし、自分自身を含めた「人間」を考えるきっかけにして欲しい…。
そんな強い願いを込めた、骨太な5冊。
この秋、ぜひ手に取ってみてください。


【信頼】を胸に駆けろ!『走れメロス』 

作・太宰治 / 画・戸田幸四郎

言わずと知れた、文豪・太宰治の名作です。

悪政が横行する地で正義を貫くため、メロスは親友を人質に差し出し、走る!
許された期限は3日。メロスは横暴な王との約束を守り、親友を救えるのか?そして親友はメロスを信じ切れるのか?

まるで映画を観ているかのような、手に汗握る展開と小気味よい文章。どんどん物語に引き込んでいく太宰治の筆の力に圧倒されます。

過酷な地を身ひとつで駆け抜け、精神・肉体ともに極限に追い込まれても走り続けるメロス。
不安に揺れる心情と限界を超えていく身体性をダイナミックに表した、戸田幸四郎の油絵も圧巻!夕日に向かって走る絵は、読み手の心を震わせます。


夕日に向かって走れ!


この【献身】に何を思う?『竜のはなし』

作・宮沢賢治 / 画・戸田幸四郎

周りの生き物から恐れられる一匹の竜。
ある日「もう、悪いことはしない。」と心に誓います。

それからの竜は、まさに試練に身を投じていきます
人間に皮を剥がされようが、蟻に身体を喰われようが、すべてを受け入れて自分自身を捧げていくのです。
竜が示したものは一体何なのか…。「許す」とは?「優しさ」とは?

この物語は『宮沢賢治全集』のなかに『手紙1』という題名で収録されているだけで、一般的にはまったく知られていない作品でした。
強い感銘を受けた戸田幸四郎は、宮沢賢治の実弟・宮沢清六さんのもとに向かい、「ぜひ、たくさんの方に読んでいただきたい。」と絵本化が決定。
『竜のはなし』と改題し、絵本化されているのは本作のみという珍しい作品でもあります。

宮沢賢治が精通していた仏教思想をベースにした物語。
小さな子には理解するのが難しいと感じるかもしれませんが、実際に「子どもたちが釘づけになった」「また読んでと言われる」という嬉しいお便りもたくさんいただいています。


痛ましい竜の姿…


ツルに【友愛】を学ぶ『百羽のツル』

作・花岡大学 / 画・戸田幸四郎

冷たい月が光る、夜更けの空。真っ白なはねを羽ばたかせ、北の方から百羽のツルが飛んできます。
目的の湖まであと少しのところで、一羽の子どものツルに異変が!それを見た周りのツルたちは、ある行動に出ます。

お互いを思いやり、助け合う心。この百羽のツルたちの連帯を目の当たりにして、私たちは何を思うでしょうか。
多くを語らずとも深い友愛の精神が溢れた物語は、読み聞かせにもぴったりという声も多く寄せられています。

凛とした空の青、そこに浮かぶ冷たい月、ツルたちの白い羽。
日本画を思わせるような繊細な戸田幸四郎の絵も、読み手の心に澄んだ空気を運んでくれます


空を舞う、友愛の精神

優しく、哀しい【母の愛】『牛女(うしおんな)』

作・小川未明 / 画・戸田幸四郎

日本のアンデルセンと評される作家・小川未明が「母の愛」をテーマに描いた心揺さぶる作品です。

ある村に「牛女(うしおんな)」と呼ばれる女がいました。
大きな体で力も強く、穏やかな性格の牛女。やがて、ひとりの男の子を出産します。
親子で過ごす幸せな時間も束の間、牛女は病気にかかり亡くなってしまうのですが…。

肉体を失っても、子どもの成長を見守り続ける母の魂。
その愛はただひたすらに純粋であり、途方もなく大きく、哀しくなるほどに切実です。

四季とともに移ろい行く東方地方の自然をとらえた、戸田幸四郎の美しい絵も必見。
牛女の真っ直ぐな愛を時にやさしく、時に神秘的に彩ります。


美しい緑の中で、手を取り合う親子

【悪心】は滑稽だ『世界一の石の塔』

作・花岡大学 / 画・戸田幸四郎

ある国に、権力を振りかざす王様がいました。
なんでも一番でないと気が済まない王様は、世界で一番高い塔が欲しくなります。
突然呼びつけたれた腕利きの石屋の働きで、着々と出来上がっていく、世界一の石の塔。
しかし他人を信じることができない王様は…。

物語の作者は『百羽のツル』と同じく、仏典童話という文学のジャンルを確立した作家・花岡大学。

権力を振りかざしては心の奥で不安に怯える人間の愚かさ、強いものにへつらう卑屈な心。
長い歴史の中で人間が繰り返してきた愚行を、テンポよくユーモラスに描きます。

戸田幸四郎のイラストもどこか漫画的な面白さも感じさせ、物語の世界をより味わい深いものへと高めています。


あれ?塔の上に誰かいる!?



■5冊セットでケースに入ったものも、こちらからお求めいただけます。




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