デザインの視点で見てみよう【第10回 【数字×ご機嫌】の未体験ゾーン。『1から100までのえほん』】

「子どもの頃から、どうも数字が苦手。」「うちの子は、数字が嫌いで…。」
大人、子どもの垣根を超えて、この世界に数多存在する数字・算数への苦手意識。我が身を振り返っても共感しかないのですが、どうしてこうした思いが生まれるのでしょう?

数字・算数はきちんと正解が決まっています。九九の暗記をはじめ、特に幼いときには正しい解を覚えなくてはなりません。
それ故、間違えることへの緊張感も伴いやすい。さらに自由な発想が必要とされる場面を感じられず、なんとなく退屈に感じてしまう。
最初につまずいてしまうと、なかなか苦手意識を払拭しにくい分野かもしれません。

では、もし数字とのファーストコンタクトが最高に楽しかったら??

そんな思いを物語と絵=デザインで超がつくほどご機嫌な形に仕上げたのが、今回ご紹介する『1から100までのえほん』です。

表紙から既に躍動感が…

まずはストーリーからご紹介しましょう。弊社の絵本でストーリーがある作品は少ないのですが、これがとにかく愉快!いや、ある意味“はちゃめちゃ”です。

海辺でヨット遊びを始める5匹のコアラ。1艘のヨットに全員で強引に乗り始め、終いには2匹のカメまでジョイン!ご機嫌を通り越して暴挙に出た結果、ヨットは早い段階で転覆します。

最終的にヘリコプターで救出されたコアラたちは、山の上の病院まで搬送されます。やさしい犬の看護師さんの手厚い看護のもと、入院生活がスタート。

しかも、このコアラたち、どうやら全員が愛されキャラのようで、陸海問わずたくさんの動物たちがお見舞いの品を持って駆けつけます。
すっかり元気になって退院し、最後は海でカメさんたちとお別れ…。というストーリーです。

「え?こんな感じでちゃんと100まで数えられるの?」と不安になられた方、安心してください。しっかり数えられますよ。

10機のヘリコプター、30匹のあおむしくん、60匹のネズミさん。一見、はちゃめちゃな展開に感じられつつも、無理なく確実に数える対象を増やしていく絶妙な構成が組まれているのです。


お見舞いの果物を運ぶ鳥たち。


そして、この大きな大きな版型もポイントです。そのサイズは30×26.5cm!ダイナミック!見開きいっぱいに広がるイラストは見ているだけでも楽しくなります。

一見とても賑やかに見えますが、子どもたちが数を数えやすいように配置されたイラストなど、無理なく数に親しんでいけるデザインが張り巡らされています。

登場するキャラクターたちもユーモアに溢れ、子どもたちは見るたびに新しい発見や爆笑ポイントを見つけ出します。
ちょっとした仕草や表情も豊か!子どもたちの想像力にも訴えかけ、いろんなお話を作りながら数を数えているというお声もたくさん寄せられます。


数えやすいレイアウト、表情も豊かです。



「病院ごっこ」ができる人気のページ



子どもたちが何かを学ぶ時、“きっかけ”が重要であると私たちは考えてきました。
最初に「楽しい!」と心を動かせば、その次の扉を開く力(ちから)を子どもたちは確実に持っています。

どの作品にもその思いが込められ、デザインにも楽しさやワクワク感が盛り込まれているのですが、この『1から100までのえほん』は特別。他の作品と比べても、なかなかのハイテンションな1冊です。

数字という答えの決まった世界に楽しさを感じさせるには、かなりのが振り切れ方が必要だと思ったのでしょう。作者・戸田幸四郎は「たむら たいへい」とペンネームを変えて、この【数字×ご機嫌】の未体験ゾーンを作り出しました。


さぁ、ご機嫌なコアラたちと数の冒険に出かけましょう!
数字に尻込みをしてしまう気持ちも、退屈な気持ちも、間違ってはいけないというドキドキも、彼らが吹き飛ばしてくれますよ!

・『1から100までのえほん』



▶︎
▶︎▶︎コラム一覧にもどる

▶︎▶︎▶︎私たちの基本の考え


  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア