デザインの視点で見てみよう【第4回 作り手のこだわり、遊びごころも隠れた『かくれんぼ』】

戸田デザイン研究室の赤ちゃん絵本シリーズ。どの作品も鮮やな色づかい、溢れ出るような暖かさで 柔らかな赤ちゃんの心に優しく寄り添い続けています。

今回ご紹介する『かくれんぼ』も、そんな赤ちゃん絵本シリーズのひとつ。(商品情報はコチラから)



おなじみの「もういいかい?」「まぁだだよ。」のフレーズとともに小さなネズミくんが お友達の動物たちと繰り広げる かくれんぼ。
シンプルで鮮やかなイラスト、楽しく可愛らしいストーリーはまさに赤ちゃん絵本にふさわしい内容なのですが…。
この作品、大人も楽しめるデザインのこだわりやユーモアが、そこかしこに“かくれて”いるのです。




まずはこの文字のレイアウトにご注目ください。
文字の大きさや配置で声の強弱、距離感を表現していますが、どことなくポスター芸術の雰囲気を感じませます。
力強いフォントは、どこかロシア アヴァンギャルドのよう。赤ちゃん絵本には珍しい甘さを控えたレイアウトですが、優しさもあり…。見れば見るほど、独特の魅力があります。

それもそのはず。実はこの文字レイアウトは1ページずつ、すべて手作業で行われました。『かくれんぼ』が出版されたのは1986年。現在のように編集をパソコンで行うことはありませんでした。自分が納得いく形を追い求めるなら、手を動かすしかないのです。

当時、とだこうしろうから文とレイアウトを頼まれた 戸田やすし。
写植屋さんに仕上げてもらった文字をハサミで切り、絵と組み合わせて「ああでもない、こうでもない」と1ページずつ試し貼りを繰り返したそうです。クールだけでもない、甘いだけでもない独特の魅力は こうした作り手の試行錯誤の賜物だったのです。

今聞くと途方もない制作工程に思えますが、その時にできる最適な手段で自分の納得のいく形を突き詰めていく。
ずっと変わらない戸田デザイン研究室のスピリットです。









そして「?」「!」だけで かくれんぼのドキドキ感を表現した斬新なページも。ひとつの感嘆符から子どもたちの想像も自由に広がります。大人が見ても、なんだかオシャレですよね。
実はこの感嘆符のみのレイアウトにも、ちょっとした制作秘話があるのです。

日々「これだ!」というレイアウトに頭を巡らせていた 戸田やすしは、ある日ひとつの逸話を思い出します。
それは、かのフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーが自身の作品の売行きを ただ一言「?」とだけ手紙に書いて出版社に尋ねた。そして出版社もただ一言「!」とだけ返信したという小粋なもの。
エスプリ溢れる文豪の書簡が、時代を超えて『かくれんぼ』に影響を与えるとは!ヴィクトル・ユーゴーも、夢にも思わなかったでしょう。



他にもハムの後ろに ぶたさんが隠れたり…(ぶたさん、渾身のブラックジョーク!?)
ヘビさんやワニさん、はたまたタコさんまで!ネズミ君のとにかく幅広い交遊関係も見逃せません。

ちょっぴり不条理な楽しさ、そしてレイアウトから見え隠れするデザインのこだわり。
こうしたことは一見「大人だからわかる感覚」と思われがちですが、子どもたちは大人が懸命に工夫したり、遊びごころを込めた部分をしっかりと感じる心を持っています。

「美しい、楽しいと思う心に大人も子どももない。」
そんな戸田デザイン研究室の哲学を反映した、なんとも可愛らしく遊びごころに溢れた1冊。ぜひ、親子でお楽しみください。
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