デザインの視点で見てみよう【第3回 怖い絵本の役割 『竜のはなし』】

絵もお話も怖いけど、なぜだか好きだった。】【大人になって思い返すと、怖いだけでなく深い話だった。】
そんな “怖い絵本” に出会った経験が、皆さんにもあるのではないでしょうか?
鮮やかで楽しいデザイン、という印象の強い戸田デザインの作品ですが、実はそうした “怖い絵本” もあるのです。
それが『竜のはなし』。
今回は 竜のはなし』を通して、“怖い絵本” が果たす役割を考えてみたいと思います。

物語の作者は『銀河鉄道の夜』など、数々の美しい詩や物語を生み出した宮澤賢治。この『竜のはなし』は絵本化されているのは本作のみ、という賢治童話の中でも珍しい作品です。
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姿も恐ろしく、近づくものを傷つける力
(ちから)を持つ一匹の竜。
ある日「もう誰も傷つけない。」と堅く心に誓い、身にふりかかる全てを受入れていきます。
皮も剥がれ、肉も喰われ…。それでも竜は他の命を傷つけないよう、自身を犠牲にただ受入れるのです。



皮を剥がれる竜。俯瞰の構図が怖い…。

物語に応えるように、とだこうしろうの画も強烈です。壮絶な竜の姿を迫力ある油絵で描きだしています。その力強いタッチと鮮烈な構図は、大人の心にもズシリと響くものがあります。
物語と絵から浮かび上がる竜の姿を、「思いやり」「やさしさ」という言葉でまとめてしまうのは、正直もの足りません。もっと強いなにか…。強烈な覚悟に支えられた生き様、と言えるもので、読む者に怖さや苦しさも感じさせます。




児童書には珍しい、重厚で迫力ある表紙

この絵本に触れた子どもたちは、テーマや内容をすぐに理解する訳ではないと思います。
ただ、怖いだけに留まらない大きなものを感じることは確かです。(実際、子どもたちが食い入るように見ていた、という感想も多く寄せられています。)

感受性は様々な体験から磨かれます。
「楽しい、やさしい」だけではない、インパクトの大きなものに触れる経験も大切です。
子どもたちは全てを理解できなくても、そこに流れるメッセージを受取り、大人になるまで心の片隅にしまっておける力(ちから)を持っています。

 “怖い絵本” は、そんな子どもたちの力を呼び覚ます大切な役割を担っているのではないでしょうか。
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