戸田デザイン研究室の「これまで、これから」〜その4〜

『あいうえおえほん』という一冊の絵本から始まった戸田デザイン研究室。
1990年の会社設立から今日まで、会社の歩みについて語ったことはほとんどありませんでした。

創業者であり作家であった戸田幸四郎とは、一体どんな人物だったのか。どんな思いで絵本を作っていたのか。そしてこれから戸田デザイン研究室はどこへ向かうのか。

父である戸田幸四郎亡きあと、代表を務める戸田靖が様々なエピソードを交え、戸田デザインの「これまでとこれから」について語ります。  (聞き手:広報 大澤千早)




手にとる人の人生を豊かに。



ーー          
幸四郎さんが亡くなって、これから戸田デザイン研究室をどうしていこう、と迷われたり 
はしなかったんですか?


戸田          迷いはなかったかな。これからは自分ですべて決めていかないと、と言う覚悟はしたけどね。


ーー          戸田さんは幸四郎さんと仕事をされている時から、絵は描かれていませんね。ご自分で絵を描こうとは思わなかったんですか?


戸田          実は幸四郎と仕事をしている時から、その話は何度か出たんです。この先の事を考えて、私も幸四郎と同じタッチで絵を描けるようにするかと。


ーー          そうだったんですか!でも戸田さんは、描かなかった。


戸田          うん。幸四郎と同じようなものを作って同じような方法でやっていくより、今と違う方法を考える方が性に合うな、って思ったんです。


ーー          幸四郎さんは戸田さんの選択をどう思っていたんでしょう?


戸田          賛成してくれていました。最期まで私に「自分がいなくなった後はこうしろ、ああしろ」という事は一切言わなかっ たです。よく考えれば、それは有難かったですね。

まぁ、書籍を売っていくことが厳しい時代がくるというのは当時からわかっていたし、そもそも幸四郎も私も出版社を作ったという感覚はないんですよ。いいモノをつくるために、戸田デザイン研究室があると思っていたと思う。


ーー          今あるものを活かして今と違う方法を考える。あいうえおつみき』は、まさにそうして生まれた作品ですね。実際にその方法をやってみて、どうでしたか?


戸田          幸四郎の絵の力を本当に知った、というのが正直な思いでした。『あいうえおつみき』は『あいうえおえほん』の文字と絵がそのままプリントされていて 最初はつみき用に線の太さとか色々修正しなければならないと考えていました。

でも実際に作業をしてみると、そのままが一番良かった。配色的にも黄金比でした。非常に完成度の高いものだと、その時初めて深く感じましたね。



【平面から立体の美しさへ。】

ーー          それまでは、そこまで幸四郎さんの絵の力を実感することはなかった?近くで見過ぎていてわからなかったとか、そういうことですか?


戸田          もちろん、良いとは思っていましたよ。ただ取材なんかを受けて色彩のバランスだとかを、幸四郎が得意気に話す訳よ(笑)。取材だからサービス精神もあるんだろうけど、それを横で聞いているとさ。


ーー          あ〜、ちょっとお話を盛ったりして?


戸田          そうそう(笑)。だから分からなかったというより、ちょっと斜めに見ていた部分もあったのかもしれない。実際に自分の思い描くモノを作る段になって「あ、これはスゴイものだな」と。


ーー          戸田さんの思い描く、これからの戸田デザイン研究室とはなんでしょうか?幸四郎さんの作品世界をしっかりと継いでいくことですか?


戸田          もちろん、長年たくさんの読者の方に読み継いでいただいた作品をしっかりと守っていくことも大事な仕事だと思っています。

私自身のやりたい事は、美しさでも何でも「ものごとの魅力や価値ははひとつではない」ということをモノ作りを通して伝えていきたいと思っています。


ーー          それは具体的にはどういうことでしょう?


戸田          例えば『あいうえおえほん』は幸四郎のオリジナルの作品で、美しさとか鮮やかさ、平面の絵本が表現できるすべてを突き詰めた完成品だと思っています。

でも『あいうえおえほん』のクリエイティブの魅力は、絵本で完結させなければいけない訳ではない。実際にこうして木工玩具にしたら、より親しみやすく、楽しくその魅力を届けられる。


ーー          今ある素材を違う形に編むことで、与える印象や魅力も変わってきますよね。ある意味、ゼロから新しいモノをつくるよりチャレンジングかもしれないですね。


戸田
          
そう。下手をするとオリジナルの魅力まで損ねかねないから、すごく緊張感はあります。




ーー          戸田デザイン研究室に対するイメージって、良くも悪くも完成されているというか。こだわりの知育絵本を頑固に作り続けるという保守的なイメージも少なからずあると思うんです。

その世界に手を加えようものなら「ここまでの完成品をいじるなんて、もっての他だ!」 と言われそうな雰囲気というか(笑)。


戸田          たまに言われるよね、そういう事(笑)。作る過程では妥協はしないけど、もうちょっと自由というか、ゆるいよね?良いと思ったら何でもアリな所もあるし。


ーー         ええ、そうですね。戸田デザインは結構、自由です(笑)。戸田さんの描くこれからを伺うと、生み出すモノの幅も自由に広がっていきますね。



戸田          うん。そうしたいと思っています。良い絵本もあれば、可愛くて質の良い木工玩具もある。戸田デザインにしかできない電子サービスがあってもいいし、アクセサリーも作ってる、みたいなのが理想かな。


ーー
          
それは楽しそうですね(笑)。そうやってプロダクトの幅を広げていって
戸田さんはこれから私たちの作品を手にしてくださる方々に、なにを届けたいですか?



戸田          すごく大袈裟な表現だけど、私たちの作るモノが手にとる人の人生を豊かにする。少しでもそういうことができたら嬉しい。そういう作品を届けたいと思います。それは幸四郎から変わらない戸田デザインの根っこだと思うし。

キレイ・可愛いも含め、デザインって強い。人の心を動かすし、素敵なものに触れる経験がその人のセンスを磨いて人生を豊かに彩ると思いますから。


ーー          それこそが、ジャンルはなんであれ、自分たちが納得できるモノを追求する戸田デザイン研究室の使命かもしれませんね。



戸田
          
そうだね。だから小さくても、やっぱり面白い会社にしたい。そこに尽きるよ!






(2018.12)


【その1】作りたいものを
【その2】すべては感覚が…
【その3】父との仕事で……



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